編集を加速するVimのquickfix機能

この記事はVim Advent Calendar 2020の3日目の記事です。
昨日は@mira010さんのvim pluginsをインストールしてみましょうでした。

みなさんquickfixを使っていますか?
Vimのquickfix機能はgrepやmakeなどの結果を保持する専用のバッファと、それを扱うための各種コマンドからなります。
IDEには当たり前のようにあるような機能ですが、Vimの場合は他の機能と組み合わせることで編集操作を格段に効率化できます。

:grep:makeも、

  1. 外部コマンドを指定した引数で実行し、
  2. ファイル名や行番号、メッセージなどの出力を解析し、
  3. ジャンプのために使えるリストを作ってくれる

のは共通です。
このリストはquickfixリストと呼ばれるもので、:copenで専用のウィンドウが開きます。
そして<Enter>キーやダブルクリックで該当行にジャンプします。

ただデフォルトのgrepコマンドはまだしも、makeコマンドは滅多に使わないという人もいるかもしれません。
その際はgrepprgmakeprgオプションで実行する外部コマンドを任意のコマンドに変更できます。
(出力される結果が解析できない形式の場合はerrorformatなども変更する必要があります。)

grepコマンドはgit grep

" スペースはエスケープが必要
set grepprg=git\ grep\ -n\ --no-color

makeコマンドはlinterやタスクランナーなどにするとグッと使いやすくなります。

" 使用例
" :make ./...
" :make --disable-all -E staticcheck
set makeprg=golangci-lint\ run

これらの設定はvimrcに書いておいたり、簡単に切り替えられるコマンドやマッピングを用意しておいても良いでしょう。

しかし、quickfixリストは同時に複数の結果を表示することができません。
そのため、複数のquickfixリストを扱うには:colder:cnewer:chistoryを使って履歴を行き来する必要があります。
もしくはlocationリストを使います。

locationリストとはウィンドウローカルなquickfixリストのことで、コマンドのプレフィックス

だけで、quickfixリストと同じように使えます。

そのため、別のウィンドウやタブページで個別にlocationリストを開くことで複数の結果を表示できます。

さて、ここまで紹介した機能だと便利なジャンプリストでしかありません。
quickfixリストを使ってさらに効率的な編集をするには、:cnextとマクロを組み合わせて使います。

例えばgrepで絞り込んだ行の特定の文字列を置換したければ、以下の操作を(qqなどで)マクロに記録し、

:s/Before/After/
:w
:cnext

大きな数を指定して(100@q1000@qで)実行すると、quickfixリストの最後まで自動的に繰り返してくれます。
リストが指定した数より少なければそこでマクロが止まってくれるので重複実行は気にしなくて大丈夫です。

この時、さらにquickfixリストを絞り込みたくなることがあるかもしれません。 :grepの場合は正規表現を工夫しても良いですが、:packadd cfilterで使えるようになる:Cfilterでquickfixリストを絞り込んでしまうのがとても楽です。

それでも絞り込むのが難しい場合、いったん別のバッファにコピーして編集し、:cbuffer:cgetbufferでquickfixリストを読み込み直しても構いません。
(quickfixリストを:setlocal modifiableして書き換えるのはちょっと乱暴なので非推奨です。)

また、quickfixリスト自体をファイルとして保存しておき、:cfile:cgetfileで読み込み直すことも可能です。
そうするとジャンプ可能なTODOリストとしても使えるので、リストが巨大だったら少しずつ進めたり、他のVimmerと作業を分担する、なんてこともできるかもしれません。

ということで、ぜひquickfix機能を活用してみてください。

本当はより実践的な例として、最近やったことを具体的なコマンド付きで紹介できれば良かったんですが、ある事情でそのヒストリーをロストして再現環境もなく...
覚えている範囲でフワッと紹介して終わります。

目的はterraformerで生成したmonitoring_alert_policy.tfファイルのdocumentationに、フィルター付きでCloud LoggingのWeb画面に飛べるリンクを追加することでした。
そのフィルターの内容はlogging_metric.tfファイルに定義されているものを使います。

  • monitoring_alert_policy.tf(のサンプル)
resource "google_monitoring_alert_policy" "alert_policy_error" {
  display_name = "My Alert Policy(Error)"
  combiner     = "OR"
  conditions {
    display_name = "test condition"
    condition_threshold {
      filter     = "resource.type=gae_app AND metric.type=logging.googleapis.com/user/my-error-metric"
      duration   = "60s"
      comparison = "COMPARISON_GT"
      aggregations {
        alignment_period   = "60s"
        per_series_aligner = "ALIGN_RATE"
      }
      threshold_value = 0.1
      trigger {
        count = 1
      }
    }
  }

  documentation = {
    mime_type = "text/markdown"
    # TODO: ここに↓の形式でリンクを入れたい
    # - [NAME](https://console.cloud.google.com/logs/query?project=PROJECT_ID&query=FILTER)
    content = ""
  }
}
  • logging_metric.tf(のサンプル)
resource "google_logging_metric" "logging_metric_error" {
  name   = "my-error-metric"
  filter = "resource.type=gae_app AND severity>=ERROR"
  metric_descriptor {
    metric_kind = "DELTA"
    value_type  = "INT64"
  }
}

手順:

  1. :grepする
  2. :copenして、不要な行があれば除外する
  3. マクロを記録開始して、
    1. getline()substitute()で検索するmetricの名前を抽出する
    2. logging_metric.tfのバッファに移動する
    3. search()getline()substitute()を使ってfilterを取得する
    4. 元バッファに戻る
    5. documentationのcontentがある行に移動する
    6. リンクを生成して追加する
      • conditionsが複数ある場合はそれぞれのリンクを追加する
      • フィルターはbase64化してクエリパラメータにする必要がある
    7. :wで保存する
    8. :cnextする
  4. マクロの記録を終了する
  5. 1000回ほど繰り返す

実は初めの数回は関数などを使用せず、ノーマルモードコマンドで普通に編集をしていました。
ただ同じような操作を繰り返していることは薄々感じていたのと、残りの件数を見て即マクロに切り替えたという経緯があります。
そのまま続けていたら数時間はかかっていたと思いますが、ほぼ一瞬で終わらせることができました。

明日は@kaneshinさんです。

GoでDBのテストにgithub.com/cockroachdb/copyistを使う

久しぶりにMySQLを使ったシステムを触ることになったものの、現状のテストが遅すぎたので高速化に取り組むことにした。

遅い原因としては、

  • テストでDBを使うパッケージが多いので接続時間がそれなりになってしまう
  • テストケースごとにTRUNCATE→INSERTでデータを入れ直している

といったところ。
なので今回はDBにアクセスしないでテストができるようになるcopyistを試してみようと思う。

github.com

仕組みとしては実行されたSQLを記録しておき、以降はその時のデータを使うという

などと似たようなものとなる。

README.mdにはMySQLは非対応と書いてあったが、普通に使うことができた。
(もしかしたら一部正しく記録/再生できないクエリがあるのかもしれない)

MySQL版のサンプルコードはこちら。

mysql_test.go

package example

import (
    "database/sql"
    "log"
    "testing"

    "github.com/cockroachdb/copyist"
    _ "github.com/go-sql-driver/mysql"
)

// GetName をテストする。
func GetName(db *sql.DB, id int64) (string, error) {
    var name string
    err := db.QueryRow("SELECT name FROM `user` WHERE id=?", id).Scan(&name)
    return name, err
}

// resetDBで使うためにグローバル変数にしておく。
var db *sql.DB

// 記録時にcopyist.Open()の中で実行される。
func resetDB() {
    db.Exec("DROP TABLE `user`")
    db.Exec("CREATE TABLE `user` (`id` INT(11) unsigned NOT NULL AUTO_INCREMENT, `name` VARCHAR(20) NOT NULL, PRIMARY KEY (`id`))")
    db.Exec("INSERT INTO `user` (id, name) VALUES (?, ?)", 1, "Andy")
}

func TestMain(m *testing.M) {
    // ドライバ名は"copyist_mysql"になる。
    copyist.Register("mysql", resetDB)

    // resetDBとテストで使うdbを作る。
    var err error
    db, err = sql.Open("copyist_mysql", "admin:pass@/copyist")
    if err != nil {
        log.Fatal(err)
    }
    defer db.Close()

    m.Run()
}

func TestGetName(t *testing.T) {
    defer copyist.Open(t).Close()

    // found
    name, err := GetName(db, 1)
    if err != nil {
        t.Fatal(err)
    }
    if name != "Andy" {
        t.Error("failed test")
    }

    // not found
    if _, err := GetName(db, 100); err != sql.ErrNoRows {
        t.Error(err)
    }
}

// subtest版
func TestGetName_subtest(t *testing.T) {
    t.Run("found", func(t *testing.T) {
        defer copyist.Open(t).Close()

        name, err := GetName(db, 1)
        if err != nil {
            t.Fatal(err)
        }
        if name != "Andy" {
            t.Error("failed test")
        }
    })

    t.Run("not found", func(t *testing.T) {
        defer copyist.Open(t).Close()

        if _, err := GetName(db, 100); err != sql.ErrNoRows {
            t.Error(err)
        }
    })
}

1回目は以下のように -record をつけてテストを実行する。

$ go test -v -record
=== RUN   TestGetName
--- PASS: TestGetName (0.09s)
=== RUN   TestGetName_subtest
=== RUN   TestGetName_subtest/found
=== RUN   TestGetName_subtest/not_found
--- PASS: TestGetName_subtest (0.12s)
    --- PASS: TestGetName_subtest/found (0.06s)
    --- PASS: TestGetName_subtest/not_found (0.06s)
PASS

そうするとtestdataディレクトに以下のようなmysql_test.copyistが生成される。

1=DriverOpen 1:nil
2=ConnPrepare   2:"SELECT name FROM `user` WHERE id=?"  1:nil
3=StmtNumInput  3:1
4=StmtQuery 1:nil
5=RowsColumns   9:["name"]
6=RowsNext  11:[10:QW5keQ]  1:nil
7=RowsNext  11:[]   7:EOF

"TestGetName"=1,2,3,4,5,6,2,3,4,5,7
"TestGetName_subtest/found"=1,2,3,4,5,6
"TestGetName_subtest/not_found"=1,2,3,4,5,7

この状態で -record をつけずに実行すると↑のデータが使われる。

$ go test -v
=== RUN   TestGetName
--- PASS: TestGetName (0.00s)
=== RUN   TestGetName_subtest
=== RUN   TestGetName_subtest/found
=== RUN   TestGetName_subtest/not_found
--- PASS: TestGetName_subtest (0.00s)
    --- PASS: TestGetName_subtest/found (0.00s)
    --- PASS: TestGetName_subtest/not_found (0.00s)
PASS

なお、記録する前に -record 無しで実行するとpanicになる。

$ go test -v
=== RUN   TestGetName
--- FAIL: TestGetName (0.00s)
panic: no recording exists with this name: TestGetName [recovered]
        panic: no recording exists with this name: TestGetName

また、以下のようにクエリを変えて、

--- a/mysql_test.go
+++ b/mysql_test.go
@@ -12,7 +12,7 @@ import (
 // GetName をテストする。
 func GetName(db *sql.DB, id int64) (string, error) {
        var name string
-       err := db.QueryRow("SELECT name FROM `user` WHERE id=?", id).Scan(&name)
+       err := db.QueryRow("SELECT name FROM `user` WHERE id=? AND TRUE", id).Scan(&name)
        return name, err
 }

記録し直さずにそのまま実行してもpanicになる。

$ go test -v
=== RUN   TestGetName
--- FAIL: TestGetName (0.00s)
panic: mismatched argument to ConnPrepare, expected SELECT name FROM `user` WHERE id=? AND TRUE, got SELECT name FROM `user` WHERE id=? - regenerate recording [recovered]
        panic: mismatched argument to ConnPrepare, expected SELECT name FROM `user` WHERE id=? AND TRUE, got SELECT name FROM `user` WHERE id=? - regenerate recording

ただし、プレースホルダーの値が変わっても返ってくるレコードは変わらないのでその点は注意が必要。
例えば以下のようにidを逆にしてもテストはPassしてしまう。

--- a/mysql_test.go
+++ b/mysql_test.go
@@ -45,7 +45,7 @@ func TestGetName(t *testing.T) {
        defer copyist.Open(t).Close()

        // found
-       name, err := GetName(db, 1)
+       name, err := GetName(db, 100)
        if err != nil {
                t.Fatal(err)
        }
@@ -54,7 +54,7 @@ func TestGetName(t *testing.T) {
        }

        // not found
-       if _, err := GetName(db, 100); err != sql.ErrNoRows {
+       if _, err := GetName(db, 1); err != sql.ErrNoRows {
                t.Error(err)
        }
 }
@@ -63,7 +63,7 @@ func TestGetName_subtest(t *testing.T) {
        t.Run("found", func(t *testing.T) {
                defer copyist.Open(t).Close()

-               name, err := GetName(db, 1)
+               name, err := GetName(db, 100)
                if err != nil {
                        t.Fatal(err)
                }
@@ -75,7 +75,7 @@ func TestGetName_subtest(t *testing.T) {
        t.Run("not found", func(t *testing.T) {
                defer copyist.Open(t).Close()

-               if _, err := GetName(db, 100); err != sql.ErrNoRows {
+               if _, err := GetName(db, 1); err != sql.ErrNoRows {
                        t.Error(err)
                }
        })

細かい部分はまだ何とも言えないが、とりあえず使えそうだし高速化にも期待ができそう。

さて、あとはこれをどうやって既存のテストに組み込んでいくか。
既存のテストではxormが使われているが、copyistに対応していないので少し特殊な初期化をしないといけないようだ。

engine, err := xorm.NewEngine("mysql", "")
// エラーハンドリングやengineの設定など
// ...

// DBをsql.Open("copyist_mysql", ...)したものと差し替える
engine.DB().DB = db

これを何とかするのが一番大変なのかもしれない...

ISUCON10に初参戦してみた

ゴリラさんと出てみようと話していたものの、申し込みのタイミングを逃してオワタと思っていたら@inductorさんに拾ってもらい、カンガルーと犬とゴリラとしてなんとかISUCON10に参加することができました。

当日は開始ちょっと前*1にDiscordとGoogleドキュメントでコミュニケーションすることを決め、 開始直後は

  • 環境を整備する
  • アプリを見る
  • ドキュメントを見る

といった感じで役割分担。

30分くらい経って、これからはベンチマークを走らせながらどこから手を付けるか考えようと思っていましたがトラブルのためなかなか実行できず、New Relicの設定をしたあとはしばらくWebアプリをポチポチしたりホストの中をウロウロしたりしていました。

ベンチマークが走ってからは、

  • 検索系
    • インデックス
    • DB分割
      • 最終的にはApp1台 + DB2台に
  • nazotte
    • LIMITでループを抜ける
    • それ以上のチューニングは結局できず...
  • low_priced
    • 静的に返したり、キャッシュしたり
  • botからのアクセス
    • nginxで弾く

をなんとかすることに。
これでスコアが480→805になったのがだいたい19:00で、そこから都合により20:20くらいまで離席...

戻ってきたタイミングで検索系がさらに最適化されてスコアは1280まで伸びましたが、最終的には1244で競技終了の21:00になりました。

以前に参加した社内ISUCONでは個人でもチームでもスコアアップに繋がるようなことがほとんどできなかったので*2、それに比べれば多少はできるようになったかもしれませんが、まだまだ力不足*3なことを痛感しました。。。

*1:12:20開始になったので11:50くらい

*2:初期スコアからほぼ変わらなかったはず

*3:特にMySQL、そしてインフラは完全にinductorさん任せ!

goplsのSymbolMatcherとSymbolStyleオプション

以下の記事で、workspace/symbolのオプションは補完と同じmatcherと紹介したが、現在のv0.4.4ではsymbolMatchersymbolStyleになっている。 daisuzu.hatenablog.com

まずはv0.4.1matchersymbolMatcherに変わり、それまでと同様、

  • fuzzy
  • caseSensitive
  • caseInsensitive(デフォルト)

の3つが補完と独立して設定できるようになった。

その後、v0.4.4symbolStyleが追加され、

  • package(デフォルト)
  • full
  • dynamic

を指定できるようになった。

packageの場合は今までと同様、パッケージ名をクエリに含める際にはコードで使う時のようにcontext.Contextといった形式で検索する。

新たに追加されたfullではgolang.org/x/net/context.Contextのようにすることで同じパッケージ名の別モジュールを区別することが可能になった。

dynamicはpackage→fullの順番でマッチさせるため、パッケージ名を含んだクエリはpackageと同じ結果になり、インポートパスから指定したクエリはfullと同じ結果になる。

Goでprotobufの定義をimportせずにフィールドの値を使う

以下のようなコードでreqにあるフィールドを使いたい場合、

opt := grpc.WithUnaryInterceptor(func(ctx context.Context, method string, req, reply interface{}, cc *grpc.ClientConn, invoker grpc.UnaryInvoker, opts ...grpc.CallOption) error {
    // ここでreqから特定のフィールド値を取得したい
    return nil
})

型が定義されているパッケージをインポートして、

if v, ok := req.(*pb.Req); ok {
    // v.Bodyでフィールドにアクセスできる
}

のように変換することになる。

この時、インポートしたくない or インポートできないのであれば、protocが生成する定義にはGetterも同時に生成されるため、対象フィールドのGetterがあるinterfaceで型アサーションすると手軽にできる。

if v, ok := req.(interface{ GetBody() []byte }); ok {
    // v.GetBody()でフィールドの値を取得できる
}

あまり使い所はないかもしれないが、google.golang.org/appengineは定義がinternal配下にあるため、例えばテストでWithAPICallFuncを使う際など、以下のようにしてtaskqueue.Addのリクエスト(TaskQueueAddRequest)からフィールドの値を取得できる。

var got []byte
ctx = appengine.WithAPICallFunc(ctx, func(ctx context.Context, service, method string, in, out proto.Message) error {
    if service == "taskqueue" && method == "Add" {
        if v, ok := in.(interface{ GetBody() []byte }); ok {
            got = v.GetBody()
        }
    }
    return nil
})
DoSomething(ctx) // 関数内でtaskqueue.Add()が呼ばれる

if !reflect.DeepEqual(got, want) {
    t.Errorf("body = %q, want %q", got, want)
}

なお、フィールドがインポートできない型になっているとinterfaceも作れないのでこの方法は使えない。
それでも必要な場合はencoding/jsonパッケージでMarshalしてからmap[string]interface{}や独自型にUnmarshalすれば良い。

gopls(v0.4.0)の機能

goplsは更新頻度が高く、何ができるのかをちゃんと把握できていなかったので、LSPのメソッドベースで今の時点(v0.4.0)の機能をざっと調べてみることにしました。

補完(textDocument/completion)

入力中の変数や定数、関数といった各種定義などをbuiltinも含めて補完してくれます。
この機能のためにgoplsを使っているという人もけっこう多いはず。

基本的に文脈に合わせた候補を返したり、優先度が高くなるようになっていますが、

  • おかしな候補が返ってくる
  • 期待する候補が返ってこない

という場合はコントリビュート(issue報告や修正する)チャンスかもしれません。

例えば、

  • スコープに存在しない定義は候補にならない
    • スコープ外の変数など
  • カーソル位置で使えないキーワードは候補にならない
    • iota: const入力中のみ
    • range: for入力中のみ
    • break: for、switch、select内
    • continue: for内
    • など
  • 型が合わないものは候補から外されることがある
    • 代入時

のような制御があります。

また、以下の場合は補完で入力される内容自体が変化します。

  • 参照が要求される場合、値には&がつく
// vへの代入時、
var v *int
i := 1
v = // iは&iになる

// func f(i *int)を呼び出す際、
f( // iは&iに変換される
  • 値が要求される場合、参照には*がつく
// iへの代入時、
var v *int
var i int = // vは*vになる

// func f(i int)を呼び出す際、
f( // vは*vに変換される
  • 可変長引数の場合に...が展開される
func fn(v ...int) {}

func do(v []int) {
    fn( // vはv...になる
}
  • 引数の型がわかる場合はその型が補完される
    • func(...[]int) を呼び出す際は[]int{}が候補になる
    • var _ []int = make()の第1引数は[]intが候補になる

ただし、プレースホルダ*1スニペット*2が有効になっていないと変換されなかったり、候補として表示されません。
VS Codeはデフォルトで有効になっているはずですが、Vimの場合はプラグインによっては有効になっていないかもしれません。
そしてシグネチャを補完・展開する際にはこれらが必須となっているため、もしうまく動かない時は設定を確認してみましょう。

他にも、次の設定で補完の動作を変えることができます。

  • initializationOptions.matcher
    • デフォルトは"fuzzy"なので多少違っている候補も返ってきますが、
    • "caseSensitive""caseInsensitive"に変更できます
  • initializationOptions.completeUnimported
    • デフォルトはtrueなので未importのパッケージからも候補が返ってきますが、
    • falseで無効化できます
  • initializationOptions.deepCompletion
    • デフォルトはtrueなので構造体のフィールドも候補として返ってきますが、
    • falseで無効化できます
// deepCompletion=trueだと

type param struct{ i int }

func fn(i int) {}

func do(p param) {
    fn( // p.iが候補として表示される
}

それ以外の特殊な動作としては、

  • if err != nilスニペット展開
    • errorを返す関数内のみ
  • 公開されるvarのgodoc補完
    • 次のバージョンではconstfunctypeも対象になる

があります。

ジャンプ系

自分の場合は補完よりこちらを多用しています。
ただ、definitiontypeDefinitionは違いがわからないまま使っていました。

textDocument/definition

カーソル位置にあるシンボルの定義元にジャンプする時に使用します。
関数内の変数はその関数内で定義(宣言)された場所にジャンプします。

type myType struct{}

func fn() {
    t := myType{}    // ←
    t.method()       // tが宣言されたのは1行上
}

コマンドラインからはgopls query definitionsで使えます。
※次のバージョンからqueryが不要になる

gopls query definition internal/lsp/definition.go:14:67

textDocument/typeDefinition

カーソル位置にあるシンボルの型定義にジャンプする時に使用します。
関数内の変数は実際の型のある場所にジャンプします。

type myType struct{} // ←

func fn() {
    t := myType{}
    t.method()       // tの型定義はfnの上にあるmyType
}

textDocument/implementation

カーソル位置にあるシンボルの、

  • インタフェースから型
  • 型からインタフェース

にジャンプする時に使用します。

コマンドラインからはgopls implementationで使えます。

gopls implementation internal/lsp/implementation.go:14:10

textDocument/references

カーソル位置にあるシンボルが参照されている(使われている)場所にジャンプする時に使用します。

コマンドラインからはgopls referencesで使えます。

gopls references internal/lsp/references.go:14:18

textDocument/documentSymbol

現在開いているファイルのシンボル一覧を取得します。
結果はジャンプするためや、ファイルのアウトライン表示のためにも使われます。

コマンドラインからはgopls symbolsで使えます。
CLIでうまく動かないhttps://go-review.googlesource.com/c/tools/+/232557

workspace/symbol

プロジェクト(リポジトリ本体と依存パッケージ)からシンボル一覧を検索します。
※LSPの仕様では依存パッケージは含まれないはずですが、その方が便利なのでそういう実装になっています

今のところ結果は100件までに制限されています。
※一度に全部返してしまうとクライアントが高負荷で固まってしまうことがあるため

また、検索方法は補完と同じでinitializationOptions.matcherに従います。

コマンドラインからはgopls workspace_symbolで使えます。

gopls workspace_symbol WorkspaceSymbols

Vimからはtagfunc経由でctagsのように使うこともできます。
設定例は下記参照。 daisuzu.hatenablog.com

その他

Diagnostic以外はほとんど使っていませんでした。。。
しかし、今回調べたことでrenamegorenameの代わりになるくらい完成度が高くなっていたり、SuggestedFixの種類がだんだん増えていることがわかったのは大きな収穫でした。

Diagnostic

go vet(golang.org/x/tools/go/analysis/passes/...)やgofmt -sstaticcheckなどのチェックを行います。
実行するチェッカーは以下のオプションでカスタマイズできます。

  • initializationOptions.analyses
  • initializationOptions.staticcheck

結果にSuggestedFixが含まれている場合、codeAction経由で修正可能です。

SuggestedFixの例:

  • returnの返り値の数があっていない時に追加したり、削除したり
  • 2回目以降の:==に変更したり
  • 未定義変数の<変数名> :=を挿入したり

コマンドラインからはgopls checkで使えます。

gopls check internal/lsp/testdata/lsp/primarymod/analyzer/bad_test.go

textDocument/codeAction

SuggestedFixの実行やimportの追加・削除(go.modへの追加も含む)を行います。

コマンドラインからはgopls fixgopls importsで使えます。

textDocument/codeLens

調べてもイマイチよくわかっていない機能ですが、現状は//go:generateコメントのある行でgo generateが実行できるよ、という情報を返してくれるようです。
また、go.modを開いている場合は依存パッケージのアップデートができるかどうかを教えてくれるようです。

textDocument/hover

カーソル位置のシグネチャや型などの情報を返してくれます。

textDocument/signatureHelp

カーソル位置のシグネチャやヘルプを返してくれます。

コマンドラインからはgopls signatureで使えます。
<position>の指定方法がわからず...は関数呼び出しの()内の位置を指定する必要がある

gopls signature internal/lsp/signature_help.go:21:53

textDocument/documentHighlight

カーソル位置のシンボルが使われている場所をハイライトします。

コマンドラインからはgopls highlightで使えます。

gopls highlight internal/lsp/highlight.go:17:2

現在開いているファイルがimportしているパッケージの https://pkg.go.dev へのリンクや、 <org>/<repo>#<number>形式のコメントからGitHub Issuesへのリンクを返してくれます。

コマンドラインからはgopls linksで使えます。

gopls links internal/lsp/link.go

textDocument/formatting

現在開いているファイルを整形します。

コマンドラインからはgopls formatで使えます。

# -dでdiffを表示する
gopls format -d internal/lsp/testdata/lsp/primarymod/format/bad_format.go.in

textDocument/rename

カーソル位置のシンボルをリネームします。

コマンドラインからはgopls renameで使えます。

# -dでdiffを表示する
gopls rename -d internal/lsp/rename.go:14:18 doRename

リネーム可能かどうかを調べるためにはtextDocument/prepareRenameで確認できます。
コマンドラインからはgopls prepare_renameで使えます。

# rangeが表示されればリネーム可能
gopls prepare_rename internal/lsp/rename.go:14:18

textDocument/foldingRange

コードを折り畳む範囲を返してくれます。

コマンドラインからはgopls folding_rangesで使えます。

gopls folding_ranges internal/lsp/folding_range.go

workspace/executeCommand

codeLensの結果からgo generatego getの実行をしてくれるようです。
また、diagnosticの結果からgo mod tidyの実行をしてくれるようです。

未実装

以下のメソッドはまだ実装されていません。

*1:initializationOptions.usePlaceholders = true

*2:capabilities.textDocument.completion.completionItem.snippetSupport = true

GoでREST APIを呼ぶテストにhttp.FileServerを使う

例えばGET /users/:idのようなAPIの場合、

testdata
└── users
    └── 1

のように、testdata配下のusersディレクトリにidをファイル名としたJSONファイルを配置しておきます。

そうすると、

http.FileServer(http.Dir("testdata"))

で、testdata配下のパスとリクエストのパスが一致するファイルが

  • 存在すれば200 OKでそのファイルの中身
  • 存在しなければ404 Not Found

を返すサーバが作れます。

http.Get(os.Getenv("API_URL") + "/users/" + strconv.FormatInt(id, 10))

のような呼び出し方をしていればhttptestを使って次のようにテストが書けます。

package api

import (
    "net/http"
    "net/http/httptest"
    "os"
    "reflect"
    "testing"
)

func Test_getUser(t *testing.T) {
    ts := httptest.NewServer(http.FileServer(http.Dir("testdata")))
    defer ts.Close()

    if err := os.Setenv("API_URL", ts.URL); err != nil {
        t.Fatal(err)
    }
    defer os.Unsetenv("API_URL")

    type args struct {
        id int64
    }
    tests := []struct {
        name    string
        args    args
        want    *user
        wantErr bool
    }{
        {
            name:    "OK",
            args:    args{id: 1},
            want:    &user{ID: 1, Name: "Alice"},
            wantErr: false,
        },
        {
            name:    "NotFound",
            args:    args{id: 2},
            want:    nil,
            wantErr: true,
        },
    }
    for _, tt := range tests {
        t.Run(tt.name, func(t *testing.T) {
            got, err := getUser(tt.args.id)
            if (err != nil) != tt.wantErr {
                t.Errorf("getUser() error = %v, wantErr %v", err, tt.wantErr)
                return
            }
            if !reflect.DeepEqual(got, tt.want) {
                t.Errorf("getUser() = %v, want %v", got, tt.want)
            }
        })
    }
}

POSTメソッドの場合、

  • エンドポイントがPOST /usersのような形式になるのと、
  • 201 Created500 Internal Server Errorが返せないため、

http.FileServerよりはhttp.HandlerFuncを使った方が良いでしょう。
また、リクエストパスとファイルが1対1にならない時も同様です。