Vimの極意

この記事はVim Advent Calendar 2022の1日目の記事です。

今年でVimをメインエディタにして15年になります。
最近どうすれば思考する速度でテキストを編集できるようになる*1のか考えたりすることがあったので、この機会に軽くまとめてみます。

簡単な操作であれば「○○をしたい」と思った瞬間にそうなっていることもありますが、実際はそうならないことがの方が多いです。
それが何故なのかというと、複雑な編集をする際には自分のやりたいことをVimの操作に変換する必要があり、そこに時間がかかっているからだと考えました。

そこで思いついたのが、やろうとしていること自体をVimのコマンド群として捉えられるようになればさらに高速にテキストを編集できるのではないか、ということです。

具体例をあげてみると、以下のようなGoのコードでカーソルがfuncのfにある時に、戻り値の型をClientInterfaceから*Clientに変更したいと思ったら、

func NewClient() ClientInterface {
    return newDefaultClient()
}

戻り値の位置にカーソルを移動して、カーソル下の単語を*Clientに書き換えよう、と考えてVimを操作するのではなく、
最初から$bcw*Clientと考えてVimを操作します。

つまり、「あらゆる編集操作をVimのコマンドで表現できるようになる」ことがVimの極意ということになります。

実際に文章に書いて読んでみるとかなり難しそうな気がしてきましたが、
これを会得する方法としては以下の7つが考えられます。

  1. 極意のことを意識しながらVimを使い続ける
  2. 定期的にVimのヘルプを読み返してコマンドとしての語彙を増やす
  3. 指に負担を感じたら少し立ち止まってより良い方法がないか調べる
  4. VimGolfをやる
  5. 覚えにくい処理をユーザー定義コマンドやマッピングにする
    • vimrcを育てる
  6. 4で汎用性が高いものをプラグインにする
    • 既に似たようなプラグインがあればそれを使っても良い
  7. 5で有用なものをVimの本体に組み込む
    • Vim本体の実装に対する知識が必要

ある程度身に付いてくれば先のサンプルコードで戻り値の型がわからなくてもすぐに
/newD<CR><C-]>Wyiw<C-T>j%bcw<C-R>0<ESC>が出てくるようになることでしょう。

ぜひ試してみてください。

*1:実践Vim 第21章の続き

goplsに独自Analyzerを組み込む

internal/lsp/source/options.godefaultAnalyzers()が返すmapに自作のAnalyzerを追加してgo installすれば使えるようになる*1

用途としてはチームのコーディング規約をtextDocument/diagnosticでチェックしたり、チェックに引っかかったコードの修正や一部だけ実装したコードの続きを生成するtextDocument/codeActionを実行したりなど。

今まではCIで独自Analyzerとreviewdog + action-suggesterを用いてチェックやコード修正を行っていたものを、goplsに組み込むことによってより早いコーディングのタイミングで行えるようになった。

もちろん補完やコードジャンプ、コード生成(textDocument/codeLens)などをカスタマイズしてさらに便利にすることもできるけど、本体の変更に追従するのが大変になりそうなので今のところはやっていない。
Analyzerの追加だけであればコンフリクトのことはほとんど考えなくて良いので定期的にupstreamを取り込むように設定するくらいでメンテナンスに関しては特に問題なさそう。
それにgoplsのCLI版で使えない機能を増やしすぎてしまうと、GoLandなどLSPに対応していないツールと差が開きすぎてしまうのも理由の一つ*2

*1:gopls/v0.9.4の場合

*2:今のチームは半分近くのメンバーがGoLandを使っているので

QNAPをTS-233に移行した

今までTS-231を使っていたけど、たまに落ちることがあったり去年ついにサポートが切れてしまったのでTS-233に移行した。

手順はTS-231の電源を落として、HDDを入れ替えて、TS-233を起動するだけ。

起動後は固定IPにしていたのがDHCPになっていた*1のでQfinderで探し、一応IP設定を戻しておいた。
それ以外はデータもアカウントもそのまま引き継がれていたので特に何もしなくて良かった。*2

普段からそんなに読み書きはしていなかったのであまり性能の違いを感じられていないけど、ブラウザからアクセスした時の画面がもたつかなくなっていたのは嬉しいポイント。
あとは長期間安定して動いてくれることを祈るばかり。

*1:TS-231にはNICが2枚あって、Adapter1を固定IP、Adapter2をDHCPにしていたらAdapter2の方が引き継がれたっぽい

*2:https://www.qnap.com/ja-jp/nas-migration/?os=qts&source=ts-231&destination=ts-233 に書いてあったものの、やってみるまではちょっと不安だった

golang.org/x/exp/jsonrpc2を使ってgoplsに接続する

最近golang.org/x/expjsonrpc2が追加されていることを知ったので試してみた。 pkg.go.dev

基本的な使い方としてはDialConnectionを作成し、

  • レスポンスが返ってくるメソッドはCall + Await
  • レスポンスが返ってこないメソッドはNotify

を呼べば良い。

Content-Lengthなんかの処理はConnectionOptionsがデフォルトで設定するHeaderFramerがやってくれる。

以前に書いたgoplsに接続するコードに比べるとだいぶスッキリした。 daisuzu.hatenablog.com

import (
    "context"
    "net"

    "golang.org/x/exp/jsonrpc2"
)

type Client struct {
    conn *jsonrpc2.Connection
}

func Connect(ctx context.Context, addr string, initializeParams map[string]any) (*Client, error) {
    conn, err := jsonrpc2.Dial(ctx,
        jsonrpc2.NetDialer("tcp", addr, net.Dialer{}),
        jsonrpc2.ConnectionOptions{}, // goplsに繋ぐ時は全てデフォルト値でOK
    )
    if err != nil {
        return nil, err
    }

    var initializeResult map[string]any // このサンプルではレスポンスを受け取るだけで使わない
    if err := conn.Call(ctx, "initialize", initializeParams).Await(ctx, &initializeResult); err != nil {
        return nil, err
    }

    if err := conn.Notify(ctx, "initialized", map[string]any{}); err != nil {
        return nil, err
    }

    return &Client{conn: conn}, nil
}

func (c *Client) Shutdown(ctx context.Context) error {
    return c.conn.Notify(ctx, "shutdown", map[string]any{})
}

go-cmpでmap内の時間文字列を近似比較する

以下のような関数をテストする際、期待する値もtime.Now()で生成して概ね問題ない。

func f() map[string]interface{} {
    return map[string]interface{}{
        "time": time.Now().Format("2006-01-02 15:04:05"),
    }
}

ただし関数内に多くの処理がある場合など、ごく稀に時間がズレてFAILしてしまうことがある。
こういった関数を作らないことで回避することもできるが、cmp.FilterPathを使うと次のような比較処理を実装できる。

  1. mapの特定のキーに対して、
  2. 値をinterface{}からtime.Timeに変換し、
  3. 2つの値の差が1秒以下ならOKとする
cmp.FilterPath(func(p cmp.Path) bool {
    if mi, ok := p.Index(-1).(cmp.MapIndex); ok {
        // 1. mapのキーがtimeの場合はComparerを使う
        return mi.Key().String() == "time"
    }
    return false
}, cmp.Comparer(func(x, y interface{}) bool {
    // 2. time.Timeに変換する
    xt, ok := parseTime(x)
    if !ok {
        return false
    }
    yt, ok := parseTime(y)
    if !ok {
        return false
    }

    if xt.Before(yt) {
        // xt.Sub(yt)が負の値にならないように入れ替える
        xt, yt = yt, xt
    }

    // 3. Durationが1秒以下ならOKとする
    return xt.Sub(yt) <= time.Second
}))

使用例はこちらgo.dev

Vimのterminalでパイプを使う

この記事はVim Advent Calendar 2021の9日目の記事です。

Vimにterminal機能が追加されてずいぶん経ちましたが、普段はtmux上でVimを使っていたので実際のところ使用頻度はそんなに高くありませんでした。
たまに使った時は出力がVimの中に閉じているため、検索したり編集したりはtmuxのペイン分割と比べてやりやすいなと思うことがあったくらいです。

ただ、最近になって似たようなコマンドを何度も実行することが増えてきて、その度にシェルの履歴から探してきてはコマンドライン引数を変更して実行するのが煩わしくなってきました。
例えば以下のようなコマンドです。

go test \
    # 1. 詳細な出力が欲しい(-v)
    # 2. カバレッジが取りたい(-covermode, -coverprofile, -coverpkg)
    # 3. 実行するテストを指定したい(-run)
    # 4. goldenファイルを更新したい(-golden)
    # 5. テストの分析がしたい時は出力を自作コマンドに流し込む

1〜4までは:executeを使って組み立てたcmdを実行するようにすれば良いので簡単です。

:execute 'terminal ' . cmd

ところが5で出力を流すのに、パイプ(|)をどのように使えば良いのかわかりませんでした。
いくつか試してみたところ、bash(やzsh)の-cオプションに""で実行したいコマンドを渡してあげれば良いことがわかりました。

" grepが効かない(`|`以降もvimコマンドの引数として扱われる)
:terminal vim -h | grep vimrc

" エラー
:terminal bash -c 'vim -h | grep vimrc'

" OK
:terminal bash -c "vim -h | grep vimrc"

これを自作コマンドにしておくと簡単に実行できます。

当初は柔軟に実行できる形にしようと思っていましたが、組み合わせはある程度固定化されていたので3、4パターンほどコマンドとして定義しておき、必要に応じて修正するような使い方をしています。
シェルスクリプトMakefileにしておくのも手かと思いますが、管理の手間などを考えると自分にとってはvimrcに書いておくのが一番楽でした。

curlとjqを組み合わせても良さそうなので、必要になったら同じようにしてやってみようと思っています。

Goのモジュールを個別に更新する

特に問題なければ go get -u ./... で全て更新してしまうのが楽ですが、更新できないモジュールがある場合は個別に更新する必要があります。

go list -m -u all で全モジュールとその更新有無を確認できるため、 -f でgo getコマンドを出力するようにし、必要なものだけ実行すると楽です。

例えばgoplsはそのまま実行すると以下のようになりますが、

$ go list -m -u all
golang.org/x/tools/gopls
github.com/BurntSushi/toml v0.4.1
github.com/davecgh/go-spew v1.1.1
github.com/google/go-cmp v0.5.6
github.com/google/safehtml v0.0.2
github.com/jba/templatecheck v0.6.0
github.com/kr/pretty v0.1.0 [v0.3.0]
github.com/kr/pty v1.1.1 [v1.1.8]
github.com/kr/text v0.1.0 [v0.2.0]
github.com/pkg/diff v0.0.0-20210226163009-20ebb0f2a09e
github.com/pmezard/go-difflib v1.0.0
github.com/rogpeppe/go-internal v1.8.0
github.com/sanity-io/litter v1.5.1
github.com/sergi/go-diff v1.1.0 [v1.2.0]
github.com/stretchr/objx v0.1.0 [v0.3.0]
github.com/stretchr/testify v1.4.0 [v1.7.0]
github.com/yuin/goldmark v1.4.1 [v1.4.4]
golang.org/x/crypto v0.0.0-20191011191535-87dc89f01550 [v0.0.0-20211108221036-ceb1ce70b4fa]
golang.org/x/mod v0.5.1
golang.org/x/net v0.0.0-20211015210444-4f30a5c0130f [v0.0.0-20211112202133-69e39bad7dc2]
golang.org/x/sync v0.0.0-20210220032951-036812b2e83c
golang.org/x/sys v0.0.0-20211019181941-9d821ace8654 [v0.0.0-20211113001501-0c823b97ae02]
golang.org/x/term v0.0.0-20201126162022-7de9c90e9dd1 [v0.0.0-20210927222741-03fcf44c2211]
golang.org/x/text v0.3.7
golang.org/x/tools v0.1.7 => ../
golang.org/x/xerrors v0.0.0-20200804184101-5ec99f83aff1
gopkg.in/check.v1 v1.0.0-20190902080502-41f04d3bba15 [v1.0.0-20201130134442-10cb98267c6c]
gopkg.in/errgo.v2 v2.1.0
gopkg.in/yaml.v2 v2.2.4 [v2.4.0]
honnef.co/go/tools v0.2.1 [v0.2.2]
mvdan.cc/gofumpt v0.1.1 [v0.2.0]
mvdan.cc/xurls/v2 v2.3.0

更新があり、直接使っている(not .Indirect)モジュールのgo getコマンドを生成すると以下のようになります。

$ go list -m -u -f '{{if (and .Update (not .Indirect))}}go get {{.Path}}@{{.Update.Version}}{{end}}' all
go get github.com/sergi/go-diff@v1.2.0
go get golang.org/x/sys@v0.0.0-20211113001501-0c823b97ae02
go get honnef.co/go/tools@v0.2.2
go get mvdan.cc/gofumpt@v0.2.0