Goでprotobufの定義をimportせずにフィールドの値を使う

以下のようなコードでreqにあるフィールドを使いたい場合、

opt := grpc.WithUnaryInterceptor(func(ctx context.Context, method string, req, reply interface{}, cc *grpc.ClientConn, invoker grpc.UnaryInvoker, opts ...grpc.CallOption) error {
    // ここでreqから特定のフィールド値を取得したい
    return nil
})

型が定義されているパッケージをインポートして、

if v, ok := req.(*pb.Req); ok {
    // v.Bodyでフィールドにアクセスできる
}

のように変換することになる。

この時、インポートしたくない or インポートできないのであれば、protocが生成する定義にはGetterも同時に生成されるため、対象フィールドのGetterがあるinterfaceで型アサーションすると手軽にできる。

if v, ok := req.(interface{ GetBody() []byte }); ok {
    // v.GetBody()でフィールドの値を取得できる
}

あまり使い所はないかもしれないが、google.golang.org/appengineは定義がinternal配下にあるため、例えばテストでWithAPICallFuncを使う際など、以下のようにしてtaskqueue.Addのリクエスト(TaskQueueAddRequest)からフィールドの値を取得できる。

var got []byte
ctx = appengine.WithAPICallFunc(ctx, func(ctx context.Context, service, method string, in, out proto.Message) error {
    if service == "taskqueue" && method == "Add" {
        if v, ok := in.(interface{ GetBody() []byte }); ok {
            got = v.GetBody()
        }
    }
    return nil
})
DoSomething(ctx) // 関数内でtaskqueue.Add()が呼ばれる

if !reflect.DeepEqual(got, want) {
    t.Errorf("body = %q, want %q", got, want)
}

なお、フィールドがインポートできない型になっているとinterfaceも作れないのでこの方法は使えない。
それでも必要な場合はencoding/jsonパッケージでMarshalしてからmap[string]interface{}や独自型にUnmarshalすれば良い。

gopls(v0.4.0)の機能

goplsは更新頻度が高く、何ができるのかをちゃんと把握できていなかったので、LSPのメソッドベースで今の時点(v0.4.0)の機能をざっと調べてみることにしました。

補完(textDocument/completion)

入力中の変数や定数、関数といった各種定義などをbuiltinも含めて補完してくれます。
この機能のためにgoplsを使っているという人もけっこう多いはず。

基本的に文脈に合わせた候補を返したり、優先度が高くなるようになっていますが、

  • おかしな候補が返ってくる
  • 期待する候補が返ってこない

という場合はコントリビュート(issue報告や修正する)チャンスかもしれません。

例えば、

  • スコープに存在しない定義は候補にならない
    • スコープ外の変数など
  • カーソル位置で使えないキーワードは候補にならない
    • iota: const入力中のみ
    • range: for入力中のみ
    • break: for、switch、select内
    • continue: for内
    • など
  • 型が合わないものは候補から外されることがある
    • 代入時

のような制御があります。

また、以下の場合は補完で入力される内容自体が変化します。

  • 参照が要求される場合、値には&がつく
// vへの代入時、
var v *int
i := 1
v = // iは&iになる

// func f(i *int)を呼び出す際、
f( // iは&iに変換される
  • 値が要求される場合、参照には*がつく
// iへの代入時、
var v *int
var i int = // vは*vになる

// func f(i int)を呼び出す際、
f( // vは*vに変換される
  • 可変長引数の場合に...が展開される
func fn(v ...int) {}

func do(v []int) {
    fn( // vはv...になる
}
  • 引数の型がわかる場合はその型が補完される
    • func(...[]int) を呼び出す際は[]int{}が候補になる
    • var _ []int = make()の第1引数は[]intが候補になる

ただし、プレースホルダ*1スニペット*2が有効になっていないと変換されなかったり、候補として表示されません。
VS Codeはデフォルトで有効になっているはずですが、Vimの場合はプラグインによっては有効になっていないかもしれません。
そしてシグネチャを補完・展開する際にはこれらが必須となっているため、もしうまく動かない時は設定を確認してみましょう。

他にも、次の設定で補完の動作を変えることができます。

  • initializationOptions.matcher
    • デフォルトは"fuzzy"なので多少違っている候補も返ってきますが、
    • "caseSensitive""caseInsensitive"に変更できます
  • initializationOptions.completeUnimported
    • デフォルトはtrueなので未importのパッケージからも候補が返ってきますが、
    • falseで無効化できます
  • initializationOptions.deepCompletion
    • デフォルトはtrueなので構造体のフィールドも候補として返ってきますが、
    • falseで無効化できます
// deepCompletion=trueだと

type param struct{ i int }

func fn(i int) {}

func do(p param) {
    fn( // p.iが候補として表示される
}

それ以外の特殊な動作としては、

  • if err != nilスニペット展開
    • errorを返す関数内のみ
  • 公開されるvarのgodoc補完
    • 次のバージョンではconstfunctypeも対象になる

があります。

ジャンプ系

自分の場合は補完よりこちらを多用しています。
ただ、definitiontypeDefinitionは違いがわからないまま使っていました。

textDocument/definition

カーソル位置にあるシンボルの定義元にジャンプする時に使用します。
関数内の変数はその関数内で定義(宣言)された場所にジャンプします。

type myType struct{}

func fn() {
    t := myType{}    // ←
    t.method()       // tが宣言されたのは1行上
}

コマンドラインからはgopls query definitionsで使えます。
※次のバージョンからqueryが不要になる

gopls query definition internal/lsp/definition.go:14:67

textDocument/typeDefinition

カーソル位置にあるシンボルの型定義にジャンプする時に使用します。
関数内の変数は実際の型のある場所にジャンプします。

type myType struct{} // ←

func fn() {
    t := myType{}
    t.method()       // tの型定義はfnの上にあるmyType
}

textDocument/implementation

カーソル位置にあるシンボルの、

  • インタフェースから型
  • 型からインタフェース

にジャンプする時に使用します。

コマンドラインからはgopls implementationで使えます。

gopls implementation internal/lsp/implementation.go:14:10

textDocument/references

カーソル位置にあるシンボルが参照されている(使われている)場所にジャンプする時に使用します。

コマンドラインからはgopls referencesで使えます。

gopls references internal/lsp/references.go:14:18

textDocument/documentSymbol

現在開いているファイルのシンボル一覧を取得します。
結果はジャンプするためや、ファイルのアウトライン表示のためにも使われます。

コマンドラインからはgopls symbolsで使えます。
CLIでうまく動かないhttps://go-review.googlesource.com/c/tools/+/232557

workspace/symbol

プロジェクト(リポジトリ本体と依存パッケージ)からシンボル一覧を検索します。
※LSPの仕様では依存パッケージは含まれないはずですが、その方が便利なのでそういう実装になっています

今のところ結果は100件までに制限されています。
※一度に全部返してしまうとクライアントが高負荷で固まってしまうことがあるため

また、検索方法は補完と同じでinitializationOptions.matcherに従います。

コマンドラインからはgopls workspace_symbolで使えます。

gopls workspace_symbol WorkspaceSymbols

Vimからはtagfunc経由でctagsのように使うこともできます。
設定例は下記参照。 daisuzu.hatenablog.com

その他

Diagnostic以外はほとんど使っていませんでした。。。
しかし、今回調べたことでrenamegorenameの代わりになるくらい完成度が高くなっていたり、SuggestedFixの種類がだんだん増えていることがわかったのは大きな収穫でした。

Diagnostic

go vet(golang.org/x/tools/go/analysis/passes/...)やgofmt -sstaticcheckなどのチェックを行います。
実行するチェッカーは以下のオプションでカスタマイズできます。

  • initializationOptions.analyses
  • initializationOptions.staticcheck

結果にSuggestedFixが含まれている場合、codeAction経由で修正可能です。

SuggestedFixの例:

  • returnの返り値の数があっていない時に追加したり、削除したり
  • 2回目以降の:==に変更したり
  • 未定義変数の<変数名> :=を挿入したり

コマンドラインからはgopls checkで使えます。

gopls check internal/lsp/testdata/lsp/primarymod/analyzer/bad_test.go

textDocument/codeAction

SuggestedFixの実行やimportの追加・削除(go.modへの追加も含む)を行います。

コマンドラインからはgopls fixgopls importsで使えます。

textDocument/codeLens

調べてもイマイチよくわかっていない機能ですが、現状は//go:generateコメントのある行でgo generateが実行できるよ、という情報を返してくれるようです。
また、go.modを開いている場合は依存パッケージのアップデートができるかどうかを教えてくれるようです。

textDocument/hover

カーソル位置のシグネチャや型などの情報を返してくれます。

textDocument/signatureHelp

カーソル位置のシグネチャやヘルプを返してくれます。

コマンドラインからはgopls signatureで使えます。
<position>の指定方法がわからず...は関数呼び出しの()内の位置を指定する必要がある

gopls signature internal/lsp/signature_help.go:21:53

textDocument/documentHighlight

カーソル位置のシンボルが使われている場所をハイライトします。

コマンドラインからはgopls highlightで使えます。

gopls highlight internal/lsp/highlight.go:17:2

現在開いているファイルがimportしているパッケージの https://pkg.go.dev へのリンクや、 <org>/<repo>#<number>形式のコメントからGitHub Issuesへのリンクを返してくれます。

コマンドラインからはgopls linksで使えます。

gopls links internal/lsp/link.go

textDocument/formatting

現在開いているファイルを整形します。

コマンドラインからはgopls formatで使えます。

# -dでdiffを表示する
gopls format -d internal/lsp/testdata/lsp/primarymod/format/bad_format.go.in

textDocument/rename

カーソル位置のシンボルをリネームします。

コマンドラインからはgopls renameで使えます。

# -dでdiffを表示する
gopls rename -d internal/lsp/rename.go:14:18 doRename

リネーム可能かどうかを調べるためにはtextDocument/prepareRenameで確認できます。
コマンドラインからはgopls prepare_renameで使えます。

# rangeが表示されればリネーム可能
gopls prepare_rename internal/lsp/rename.go:14:18

textDocument/foldingRange

コードを折り畳む範囲を返してくれます。

コマンドラインからはgopls folding_rangesで使えます。

gopls folding_ranges internal/lsp/folding_range.go

workspace/executeCommand

codeLensの結果からgo generatego getの実行をしてくれるようです。
また、diagnosticの結果からgo mod tidyの実行をしてくれるようです。

未実装

以下のメソッドはまだ実装されていません。

*1:initializationOptions.usePlaceholders = true

*2:capabilities.textDocument.completion.completionItem.snippetSupport = true

GoでREST APIを呼ぶテストにhttp.FileServerを使う

例えばGET /users/:idのようなAPIの場合、

testdata
└── users
    └── 1

のように、testdata配下のusersディレクトリにidをファイル名としたJSONファイルを配置しておきます。

そうすると、

http.FileServer(http.Dir("testdata"))

で、testdata配下のパスとリクエストのパスが一致するファイルが

  • 存在すれば200 OKでそのファイルの中身
  • 存在しなければ404 Not Found

を返すサーバが作れます。

http.Get(os.Getenv("API_URL") + "/users/" + strconv.FormatInt(id, 10))

のような呼び出し方をしていればhttptestを使って次のようにテストが書けます。

package api

import (
    "net/http"
    "net/http/httptest"
    "os"
    "reflect"
    "testing"
)

func Test_getUser(t *testing.T) {
    ts := httptest.NewServer(http.FileServer(http.Dir("testdata")))
    defer ts.Close()

    if err := os.Setenv("API_URL", ts.URL); err != nil {
        t.Fatal(err)
    }
    defer os.Unsetenv("API_URL")

    type args struct {
        id int64
    }
    tests := []struct {
        name    string
        args    args
        want    *user
        wantErr bool
    }{
        {
            name:    "OK",
            args:    args{id: 1},
            want:    &user{ID: 1, Name: "Alice"},
            wantErr: false,
        },
        {
            name:    "NotFound",
            args:    args{id: 2},
            want:    nil,
            wantErr: true,
        },
    }
    for _, tt := range tests {
        t.Run(tt.name, func(t *testing.T) {
            got, err := getUser(tt.args.id)
            if (err != nil) != tt.wantErr {
                t.Errorf("getUser() error = %v, wantErr %v", err, tt.wantErr)
                return
            }
            if !reflect.DeepEqual(got, tt.want) {
                t.Errorf("getUser() = %v, want %v", got, tt.want)
            }
        })
    }
}

POSTメソッドの場合、

  • エンドポイントがPOST /usersのような形式になるのと、
  • 201 Created500 Internal Server Errorが返せないため、

http.FileServerよりはhttp.HandlerFuncを使った方が良いでしょう。
また、リクエストパスとファイルが1対1にならない時も同様です。

packagestestのExported.Expectを使ってGoのソースからマーカーを収集する

golang.org/x/tools/go/packages/packagestestパッケージは静的解析など、Goのソースを読み込んで何かしらの処理を行うようなツールのテスト用にダミープロジェクトを作るためのパッケージです。

そういったツールを作る際、テストで期待する結果を完全に決め打ちで_test.goに書いておいても良いかもしれませんが、パターンを増やす時にはダミーのソースとそれに対応する期待結果をそれぞれ追加していかなければいけないので、数が増えてくるとメンテナンスが大変になってしまいます。

そのため、ダミーのソースの中にマーカーを埋め込んでおいて、それを元に期待する結果をテスト時に組み立てるようにすると、パターンを追加する時の変更箇所が1つになり、またテストコード自体の見通しも良くなります。

具体例はgoplsのテストを見るのが良いですが、簡単にまとめると、

1) テスト関数の本体でpackagestest.TestAllを呼び、

func Test(t *testing.T) {
    packagestest.TestAll(t, test)
}

2) testの中でpackagestest.Exportを使ってダミープロジェクトをセットアップし、

// Moduleにはtestdataにあるモジュールを指定しても良い
exported := packagestest.Export(t, e, []packagestest.Module{
    {
        Name: "example.com/pkg", // モジュール名
        Files: map[string]interface{}{
            "foo/foo.go": `package foo

const Foo = 100 //@Foo, aaa(Foo, "const")
`,
            "bar/bar.go": `package bar

import "example.com/pkg/foo"

const Bar = foo.Foo * 10 //@bbb("Bar", Foo)
`,
        },
    },
})
defer exported.Cleanup()

3) その戻り値のExpectメソッドでマーカーを収集する、

if err := exported.Expect(map[string]interface{}{
    // @aaa()用
    "aaa": func(pos token.Pos, arg string) {
        t.Logf("pos = %v, arg = %v", pos, arg)
    },
    // @bbb()用
    "bbb": func(pos token.Pos, arg token.Pos) {
        t.Logf("pos = %v, arg = %v", pos, arg)
    },
}); err != nil {
    t.Fatal(err)
}

という流れになります。
あとは収集したマーカーを使って期待する結果を作ってあげればOKです。

ただExpectメソッドがどうやって位置に変換しているのか、少しわかりにくかったのでメモを残しておきます。

  • マーカーの文字列からtoken.Posに変換する場合
// OK: ↓をそのまま文字列にする
const Foo = 100 //@aaa("Foo", "const")

// NG: 同じ行にない場合はエラー
//@aaa("Foo", "const")
const Foo = 100
  • マーカーの識別子からtoken.Posに変換する場合
// OK:            ↓識別子をマーカーにしておく
const Foo = 100 //@Foo, aaa(Foo, "const")

// どこかにマーカーがあれば別の場所でも使える
const Bar = foo.Foo * 10 //@bbb("Bar", Foo)

// NG: Barはマーカーになっていないのでエラー
const Bar = foo.Foo * 10 //@bbb(Bar, Foo)
// NG: 識別子にドットは使えないのでfoo.Fooにはできない
const Bar = foo.Foo * 10 //@bbb("Bar", foo.Foo)

// OK: かわりにmarkで識別子の名前を"fooFoo"にしておくと、
const Foo = 100 //@mark("fooFoo", Foo)
// 別の場所でfooFooが使えるようになる
const Bar = foo.Foo * 10 //@bbb("Bar", fooFoo)
  • 別のマーカーを流用してtoken.Posに変換する場合
//                     ↓を
type A string //@type("AString", "A")
//                             ↓で識別子として使いたい
type Alias = A //@bbb("Alias", AString)

Expectbbbが呼ばれる前に、typeMarkするExpectを呼んでおく。

if err := exported.Expect(map[string]interface{}{
    "type": func(name string, r packagestest.Range, _ []string) {
        exported.Mark(name, r)
    },
}); err != nil {
    t.Fatal(err)
}

もし需要がありそうならゴリラ.Goのネタにするかもしれません。

goplsでworkspace/symbolが使いたい

現状の最新版(gopls/v0.2.2-pre2)では未実装。

daisuzu.hatenablog.com

を書いていたら欲しくなったので第1回 ゴリラ合宿で実装したのがコチラ。

github.com

symbolの探索はServersessionViews()から Snapshotを取ってきて、
KnownPackages()CompiledGoFiles()Parse()して*ast.Fileを引っ張り出して、
あとは地道にWorkspaceSymbolParamsにマッチするものを探していくようにした。

ただ、WorkspaceSymbolParamsの仕様*1がよくわかっておらず、実装の仕方も上記のやり方で良かったのか全然わかっていない。
また、最初は素直にスライスを作るように実装してみたところ、Vimから:tselectなどを実行すると

  • タグが重複したり、
  • 実行するたびに順番が変わったり、

するので、
重複を排除した上で、Vimで指定した文字列に近く、現在のパッケージに近いものを優先するようにしてみた。

とりあえず自分用としては使えそうなので色々と試してみることにする。

*1:特にQuery

VimのtagfuncでLSPを使う

この記事はVim Advent Calendar 2019の6日目の記事です。

今年の4月にv8.1.1228tagfuncという機能が追加されました。
こちらは:tag:tselectなどのタグ系コマンド*1を実行した時、tagsファイルを検索する代わりに呼ばれる関数を設定するためのオプションです。

設定する関数の形式としては次のようなものです。

" pattern: タグ検索中に使用されたタグ識別子
" flags: 関数の挙動を制御するためのフラグのリスト
"   'c' -> ノーマルモードのコマンドで呼び出された
"   'i' -> インサートモードのタグ補完で呼び出された
" info: 以下の情報を持つ辞書
"   {
"     'buf_ffname': 'フルファイル名',
"     'user_data': 'カスタムデータ文字列',
"   }
function! MyTagFunc(pattern, flags, info)
  " タグ情報のリストを返す
  " もしくはv:nullを返すとtagsファイルが使われる
  return [
        \  {
        \    'name': 'タグ名',
        \    'filename': 'タグが定義されているファイル名',
        \    'cmd': 'ファイル内のタグを見つけるためのExコマンド',
        \    'kind': 'タグの種類(Optional)',
        \    'user_data': 'カスタムデータ文字列(Optional)',
        \  },
        \]
endfunction

ヘルプにはtaglist()の結果を並べ替える関数が例として記載されていますが、LSPを使ってタグ情報のリストを生成できればタグジャンプがすごく便利になりそうです。

VimConf 2019ではsettagstack()を使ってタグスタックを直接操作する方法を紹介しましたが、こちらは、

  • タグ系のコマンドを使うために、
    • キーマップの変更が必須
    • Exコマンドはユーザ定義コマンドを定義する必要がある
  • Vim scriptでタグスタックの管理をしなければならない

といったものでした。

これに対し、tagfuncはオプションを設定するだけで、

  • 標準のキーマップ、Exコマンドがそのまま使える
    • タグ補完の時にも使える
  • タグスタックの管理をVim本体に任せられる

と、すごく良さそうです。

試しに任意の文字列で検索するworkspace/symbolvim-lspから呼び出してみます。

function! MyTagFunc(pattern, flags, info) abort
  let l:servers = filter(lsp#get_whitelisted_servers(),
      \ 'lsp#capabilities#has_workspace_symbol_provider(v:val)')
  if len(l:servers) == 0
    echoerr 'not supported: workspace/symbol'
    return []
  endif

  " タグ補完の場合はa:patternの先頭に \< がつくので削除する
  " (サーバ側が正規表現に対応していないかもしれないので...)
  let l:query = a:flags =~# 'i' ?
      \ substitute(a:pattern, '^\\<', '', '') : a:pattern

  let l:ctx = {'result': []}
  for l:server in l:servers
    call lsp#send_request(l:server, {
        \ 'method': 'workspace/symbol',
        \ 'params': {
        \   'query': l:query,
        \ },
        \ 'sync': 1,
        \ 'on_notification': function('s:make_taglist', [l:ctx]),
        \ })
  endfor
  return l:ctx.result
endfunction

" ctx.resultにタグ情報を追加する
func s:make_taglist(ctx, data) abort
  for result in a:data.response.result
    call add(a:ctx.result, {
        \ 'name': result.name,
        \ 'filename': lsp#utils#uri_to_path(result.location.uri),
        \ 'cmd': string(result.location.range.start.line + 1),
        \ })
  endfor
endfunction

上記関数をset tagfunc=MyTagFuncで設定すると、ctagsとほぼ同じ使い勝手のタグジャンプができるようになります。

ただ、workspace/symboltextDocument/definitionなどのようなカーソル位置を起点に対象を探すメソッドとは異なり、100%目当ての場所にジャンプできるとは限りません。

確実にジャンプしたい時はtextDocument/definitionを呼べるような実装にできれば良いのですが、MyTagFuncの引数からだと、それがExコマンドの引数に指定したタグ名なのか、カーソル位置のキーワードなのかを判別できないので、メソッドの呼び分けをするのは非常に困難です。

そのため、tagfuncに設定する関数で全部をやるのではなく、

  • CTRL-]CTRL-W ]textDocument/definition*2を呼ぶ
    • 定義元にジャンプしたい
  • それ以外はtagfuncからworkspace/symbolを呼ぶ
    • 同名の別メソッド/関数やインタフェースの実体などを探したい

というように、用途に応じて使い分けるのがオススメです!

結局settagstack()tagfuncを両方使うことに。。。

[2019/12/06 17:00追記]
flagsで判別可能でした。
@presukuさん、ありがとうございます!

tagfuncだけで完結させるにはMyTagFuncを次のようにします。

function! MyTagFunc(pattern, flags, info) abort
  let l:ctx = {'result': []}

  if a:flags ==# 'c'
    " ノーマルモード(CTRL-]など)の場合はカーソル位置の定義に飛ぶ
    let l:method = 'textDocument/definition'
    let l:servers = filter(lsp#get_whitelisted_servers(),
        \ 'lsp#capabilities#has_definition_provider(v:val)')
    let l:ctx.pattern = a:pattern
    let l:params = {
        \   'textDocument': lsp#get_text_document_identifier(),
        \   'position': lsp#get_position(),
        \ }
  else
    " Exコマンド(:tag {name}など)やタグ補完の場合はa:patternで探す
    let l:method= 'workspace/symbol'
    let l:servers = filter(lsp#get_whitelisted_servers(),
        \ 'lsp#capabilities#has_workspace_symbol_provider(v:val)')

    " タグ補完の場合はa:patternの先頭に \< がつくので削除する
    " (サーバ側が正規表現に対応していないかもしれないので...)
    let l:query = a:flags =~# 'i' ?
        \ substitute(a:pattern, '^\\<', '', '') : a:pattern
    let l:params = {
        \   'query': l:query,
        \ }
  endif

  if len(l:servers) == 0
    echoerr 'not supported: ' . l:method
    return []
  endif

  for l:server in l:servers
    call lsp#send_request(l:server, {
        \ 'method': l:method,
        \ 'params': l:params,
        \ 'sync': 1,
        \ 'on_notification': function('s:make_taglist', [l:ctx, l:method]),
        \ })
  endfor
  return l:ctx.result
endfunction

" ctx.resultにタグ情報を追加する
func s:make_taglist(ctx, method, data) abort
  for result in a:data.response.result
    if a:method ==# 'workspace/symbol'
      let l:name = result.name
      let l:location = result.location
    else
      let l:name = a:ctx.pattern
      let l:location = result
    endif
    call add(a:ctx.result, {
        \ 'name': l:name,
        \ 'filename': lsp#utils#uri_to_path(l:location.uri),
        \ 'cmd': string(l:location.range.start.line + 1),
        \ })
  endfor
endfunction

ただ一番利用頻度の高いgoplsworkspace/symbolに対応していないのでまだ常用できていません。。。

VimConf 2019に行ってきた

今年もVimConf 2019に行ってきました。

今回はテーマが “how to be more productive with Vim?” ということもあったのか、比較的Vim暦が浅い人の登壇が多かったような気もしますが、その割には発表内容が素晴らしいものばかりだったので、やっぱりVimを使う人は(良い意味で)ヤバい人ばっかりだなと思いました。

毎年のことですが、運営のみなさま大変お疲れ様でした。本当にありがとうございます。
おかげでとても楽しく過ごすことができました。


発表メモ

Vim Renaissance by Prabir Shrestha

愛用しているvim-lspの作者によるキーノート。
色々なエディタ・IDEプログラミング言語があった状況からLSPが登場し、そして未来への革命へ、的な。
乱立していると辛いとか、選択肢を広げるようにしているところとか、わかる部分もあれば自分の英語力だとちゃんと理解できているのか不安になるところもあったり...
多くの人が使えるようにするのは大事なことですけど、そこにもトレードオフがあったりするので難しいところですよね。

We can have nice things by Justin M. Keyes

2つ目のセッションはneovim作者によるキーノート。
neovimはあんまり使っていないんですが、その思想とか実装を直接聞くことができてすごく興味深かったです。
UI周りに関する作り込みとかもそうですけど、特に 「Legacy paradox」 の「表面化にある価値のあるモノ」についてはなるほどなーと思いました。

Your Vim is Only for You by mopp

午後の最初のセッション。
自分のVimを改善していくフローは今までそうしてきたことも多々あるし、今後もそうありたいと思っていることなのでとても共感できました。

Grown up from Vim User to Vim plugin developer side by IK

Vimを使い始めてからvim-jpに参加するまでの流れ。
課題を自分が直すしかない!みたいなところは思い当たることがあったり...
最後の「The next OSS contributer is YOU!!!」はとてもやる気が湧き起こる言葉ですね。

Usage and manipulation of the tag stack by daisuzu

こちらを発表してきました。 speakerdeck.com

make test by m-nishi

Vim本体のテストについて。
ターミナルが小さくてfailするのはやったことありますw
自分が以前blogに書いたことを見てくれていたりして、そういったことがこの発表に繋がっているのかなと思うとなんだか嬉しいです。

My Vim life by gorilla0513

1年前にVimを使い初めてやってきたことの軌跡。
ゴリラ.vimとか本とか、近くで関わっていて良く知ってる事もありますけど、ゴリラさんの情熱と行動力は本当にスゴいし尊敬しています!

Using Vim at Work! by Danish Prakash

心理学 + Vimといったとても興味深い発表でした。
UIについては(自分が思うように使えれば良いや、とか思ったりして)あんまり深く考えなかったりもしたけど、

  • キーボードよりマウスの方が効率的な事がある
  • テキストよりもビジュアル情報の方が6万倍速い

と言われると確かになーとなりました。

Let's Play with Vanilla Vim by Hezby Muhammad

プラグインを使わないVanilla Vimの話。
Vimを使いこなすと基本機能だけでもなんとかなってしまう事も多々あるんですよね。 :find とか補完とかタグジャンプとか。
1つ前の発表でも少し出てきましたが、まさか他の発表でタグジャンプがあるとは思っていませんでした。
そして :normalI とか A とか使うやり方はやった事なかったです。

13 Vim plugins I use every day by Tatsuhiro Ujihisa

毎日使っているプラグインの紹介。
ライブコーディングでサーバをパパッと作っていましたが、流れるようなVim捌きが本当に凄かったです!

My dark plugins development history ~ over 10 years ~ by Shougo

shougo wareの開発の歴史。
最近は使わなくなってしまいましたが...第二世代くらいまではすごくお世話になっていました!
今回で最後の登壇になるかもしれないというのがちょっと信じられません。
来年でなくてもまたいつか発表していただければなと思います。